(…ッ)

『…ビスマルク?』


―――誰か、嘘だと言って…!!


―――皇暦19XX年

――ヴァルトシュタイン邸


『ビスマルク』

そう呼べば、真新しい制服を着て、真っ白のマントを羽織った彼が振り返る。

『ナイトオブワン就任、おめでとう…』
か…」
『今はよ。貴方が付けてくれたんでしょう?』

出会って、契約を交わし数年が経っていた。

の頬を撫ぜながら、ビスマルクが問う。

「どうした。浮かない表情(かお)をしているぞ」
『……………』
「言わなければ解らない」
『…怖い、の。今までこんなコト無かった』

契約者(あなた)を失うのが、怖いだなんて。
そんなの心を悟ってか、ビスマルクは言う。

「私は負けない。…死なない」
『…ッ。解らないじゃない!!貴方は、私のような不老不死ではないのよ!?』
「それでも、お前との契約を果たすまでは…死ねない」

眼前が、真っ白に染まる。ダイレクトに聞こえる鼓動に、自身を閉じ込める逞しい腕に、抱き締められているのを感じた。

『なら契約(やくそく)して。私を遺して逝かないって』
「ああ」

そして、そっと口唇を重ねる。触れるだけのそれで、十分だった。

安心か、未だ拭えぬ不安か。
いずれにせよ、涙はまだ止まってくれない。







―――


『…嘘、吐き…ッ。私を遺しては逝かないって言ったのに…!!』
(その、つもりだった)

『また、独りぼっちじゃない…』
(本当にすまない)

『…ッ。こんなことになるなら、無理矢理にでもコードを委譲しとけば良かった…ッ』
(お前--を失くしたくなかった)

『愛してる…愛、してるのッ』
(私もだ…)

『ビスマルク…ッ。ビス、マル…クッ』
(…、すまない)

『いや…。イヤあぁああ…ッ!!』





果たされなかった
契約(やくそく)





CODE GEASS
-Lelouch of the Rebellion-R2

TURN22 派生夢


Fin






*************
ビスマルク夢小説企画「Sir Galahad and The Knight」主宰の琉維様より
「氷野さんは作品を2つ提出してくれたのでご褒美!」
みたいな流れで頂いた作品。
なんだかまさしく海老で鯛というか
明らかに琉維様のこの一作>>>>>私の作品2作品ですよね。よね!
最初のお互いの名前を呼び合うシーンとか
最後の一文とか切なくて本当好きですvv

琉維様。本当に素晴らしい作品をありがとうございました!!


サイト掲載:08.9.21