ビスマルクは少女の膝の上でそわそわとした。

「姫様…もうお許し頂けませんか?」

「駄目です」

ナイトオブワンとも思えぬ情けない声での嘆願も、はピシャリと却下した。
先日のの誕生日。
ビスマルクは戦地に外征していたため彼女を祝うことが出来なかった。
その罰としてがビスマルクに課したのが『膝枕』
それもビスマルクが彼女を膝に乗せるのではなく、彼女の膝に弱りきったビスマルクの顔を乗せている状態。
ビスマルクは男ならありえない柔らかな腿の感触を意識しないように、鉄の理性を奮起して戦っていた。
この状況。部下のジノ・ヴァインベルグであれば、というか大半の男であれば心から楽しめるのだろうが、いかんせんこの国最強の騎士はドがつく堅物だった。

「…重くはありませんか?」

「いいえ?」

早くこの状況を打破したいビスマルクは、あらゆる理由をつけて彼女の膝から撤退しようとおもうが、ことごとく無視されている。
しまいには彼女は楽しそうに笑ってはビスマルクの髪をとく。

「困っているのですか。ビスマルク?」

その問いにビスマルクは苦笑をもって答えた。

事実彼は困っていた。
自分は彼女を祝うべき日に、数多の血で手を染めていた人間。
そんな人間がのように清らかな存在に触れて良いわけがない。

の指がビスマルクの顔をなぞる。
その甘くも、苦い感覚。

もっとも困るのは、そのの腕を拒絶できないどころか、引き寄せて腕の中に抱き締めたくなることだ。

そして今もその衝動を止められない自分に、ビスマルクは心底困っていた。



Fin

08.9.20