ベッドも抱きしめた白い体も柔らかくて、何処までも沈んでいけそうだった。
月明かりがそっと部屋に差し込む。
微かな光に晒された彼女の体が震えていて、悩ましげに眉根を寄せていた。
快楽に潤む瞳が堪らないほど美しくて、流れる涙を舌で啜った。
「…はっ…ぁ、うん…ビス…マルク…ふぁっ」
息も絶え絶えにが何か伝えようとしている。
ビスマルクは動きをとめて、の前髪にそっと触れた。
「…何か言いたいことが?」
は心細そうに、ビスマルクの頬に触れた。
「もしかして…私だけ気持ち良くなってないですか?」
ビスマルクは苦笑する。そして繋がったまま彼女の上体を起こして向かい合う。
自分の重みでより深く埋め込まれた楔に、高く悲鳴をあげた彼女の耳に囁いた。
「私の胸に耳をあててごらんなさい」
は言われた通りにビスマルクの胸板に耳を当てた。
ビスマルクの心音はいつもより早い。そして彼の胸は熱く、汗ばんでいた。
「貴女の中は、熱くて心地よくて…っ…理性を保つのがやっとですよ…」
はぁ、とビスマルクは熱の籠る息を吐いた。言ったことは事実であった。
現にに包まれている楔は今も熱く滑るひだに刺激されて、快楽を訴えている。
「……なくなれば良い」
「?」
「理性なんてなくなれば良いわ。全部忘れて私のことだけを見て、せめて今だけ…」
はそっとビスマルクに口づける。
くちゅりと濡れた音がした。
「もっと激しく、して」
耳元で囁かれた言葉に、ビスマルクの理性が擦れて、切れた。
だからその忠告は最後の理性の断末魔。
「…後悔しないでください」
「あぁ!…あぁ…あっ…ふぅっ…あぁん」
ビスマルクが激しく腰を動かした。
奥へ、奥へと本能のままに楔はを犯す。
は振り落とされないようにビスマルクにしがみつく。
すると中にあるビスマルクの楔の角度が変わった。
あぅとが甘い甘い声で啼く。
「うう…ぁぁ…あっ…はぅ…あぁぁ」
白い乳房を欲望のままに、ぐちゃぐちゃに揉みしだく。
いつもの優しい愛撫ではない、荒々しい愛撫。
乳房はビスマルクの手の動きのままにぐにゃぐにゃと形を変える。
その様はあまりに卑猥で、ビスマルクの情欲を煽った。
「んっ…あぁ、ひぃっ、あっ、あぁ」
「は……はっ………っ」
ぐちゅりぐちゅりと接合部から2人の体液が落ちて、シーツにいやらしいシミが出来る。
は眉を寄せ、頬と目尻を赤く染め、快楽に身悶えている。
「あぁ、ぁぁ、とけちゃう、やっ、ここがとちゃうぅっ、やぁぁ」
が悲鳴をあげながら、2人の接合部を触る。
その仕草にどくりとビスマルクの楔が強く脈打って、益々動きが激しくなった。
「ひっ、ビスマルクぅ…っあ、はっ…っ…あ」
「…っ…」
が息も絶え絶えに、ぼろぼろと涙を零す。
強すぎる快楽が辛いのだろう。
止めてやらなければと思う。
けれど逆にその涙のせいで、ビスマルクは劣情を止められなくなった。
のけぞるの白い首にしゃぶりつく。指は彼女の胸の果実を弾いて、楔を何度も奥に擦り着けた。
「ひっ、やぁぁぁんん!!」
「くっ…!」
は扇情的な叫び声をあげて果てた。
ビスマルクも締め付ける内部に耐えられず白濁とした液を放つ。その量はいつもより多かった。
熱い飛沫を受けて、あっ、と小さくが息をついた。
そのままかくりとビスマルクの肩に顔を埋めたかと思うと、ずるりと体が横に滑り落ちそうになった。
ビスマルクは驚いて彼女を抱きとめる。
は気を失っていた。
さらに驚いてビスマルクはの肩を揺すった。
「!?」
「…ふ……ビス…マルク?」
ゆっくりとは瞼をあげた。
彼女の瞳の焦点はぼやけていて、掠れた声でビスマルクの名前をぶ。
どこか幼げなにどきりとしながら、ビスマルクはほっと安堵した。
「すまない。無理をさせました」
はしばらくぼーとしていたが、ビスマルクの言葉を理解するときょとんとした。
「…どうして、謝るの?私はこんなにも幸せなのに」
それからは眩しいばかりの笑顔をビスマルクに向けた。
「私、幸せよ。ビスマルクにすべて奪われて、私はビスマルクのすべて抱き締めて居る気がして――ビスマルクは幸せじゃない?」
ビスマルクは微笑みながら、間髪を入れずに答えた。
「幸せですよ。勿論」
答えながらビスマルクは目を細めた。
本当に――
彼女と出会えた自分はなんて僥倖を得たのだろう。
彼女と過ごせば過ごすほど、彼女の為に自分がいるのではない、自分のために彼女は生まれて来たのではないかと思い上がった錯覚を抱いてしまう。
それほどビスマルクは彼女に救われていた。
ビスマルクはの汗ではりつく前髪をかきあげて、彼女の額に軽く口づけた。
そっとを横たえて、自分の腕の中に抱き込んだ。
自然と体を擦り寄せてくる彼女の仕草に、頬が緩む。
の頭を撫でてやると心地良さそうな顔をして彼女は瞳を閉じた。
胸に暖かな気持ちが広がるのを感じながら、ビスマルクも瞼を伏せた。
Fin
08.4.12
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