朝。
新しく下賜された私邸から皇宮に向かおうとしたビスマルクは、玄関から物凄い勢いで飛び出して来たにいきなりジャンプで平手打ちを食らった。

「何をする!?」

流石に驚いて声を荒げるビスマルクに対して、はけろっと答える。

「こっちは感謝して欲しいくらいなんだけど」

意味が分からず追求しようとしたビスマルクの前に、づいと差し出されたのは純白のマント。

「寝ぼけてたでしょ。ビスマルク」

やっと意味を悟ったビスマルクは慌てて自分のマントを見るが、その色は黒。

「…まったく。せっかくのナイトオブワンの就任式なのに当人が忘れてるなんて…あやうくブリタニアの歴史に不名誉な記述を残すところだったと思うけど?」

「う…すまん。つい癖でこっちのマントを」

立つ瀬が無い様子で弁明する新ラウンズ筆頭には大袈裟にため息をつく。
だが、内心は彼の情けない失態をゲラゲラと大笑いしている。
とりあえずマントを代えるのを手伝うと、はポンッとビスマルクの背を叩いた。

「それじゃあ今度こそ、行ってらっしゃい。それと――ナイトオブワン就任おめでとう」

の祝いの言葉に彼は少し照れた様子で礼を言った。
見送る彼の背中からはちょっと前の失態の影は失せ、すでに威厳が漂っていた。

「……これで貴方の願いは叶えたわ。次は……」

低い声で囁かれたの言葉をビスマルクは知らない。




ちなみに

就任式に片頬を赤く腫らしてやってきたビスマルクに、会場では動揺が走ったという。



Fin

08.10.18