時計を見てビスマルクが、少女に尋ねた。

「風呂は?」

「ビスマルク先に入って良いよ」


朴念仁なビスマルクだが、何故か風呂は先に女に譲るのが礼儀と思い込んでいるらしい。

いつもはその好意に甘んじる彼女だったが、今日は辞退して自室に戻る。

倒れこむようにベットにつき、体を丸める。


お腹が、痛い。


女ならば誰もが経験する月のもの。

この時程初潮を迎える前に、何故不老不死になっておかなかったのかと後悔しない日はない。

どちらかと言えば症状が重い方のユリヤは出来れば動きたくないが、残りの生理用品のストックが心許無い。

ビスマルクが風呂に入っている間に買ってこなければならないだろう。

のろのろと出かける支度をするが、貧血を起こしているらしくすぐにベットに倒れてしまった。


――あっ、これはダメかも…


動こうとしても動かない体を感じつつ、少女の意識はフェイドアウトした。――



※※※


ちゅんちゅんと雀が鳴く声で、少女は目覚めた。

次の瞬間ガバッと飛び上がって、尻の下を確認する。

悲惨なことにはなっていないことを確認してホッと胸を撫で下ろす。

次に時計の針を見た。


「しまった…お風呂どころか、ビスマルクを見送りそびれた…」


失敗に気分が沈むと、まだ腹が痛いことさまざまと感じる。

今日こそ出かけなければ、と立ち上がろうとした時にサイドボードにナプキンと薬箱が見えた。


「…えっ??」


手に取ってよくよく見てみるが、やっぱりナプキンと生理薬である。

ちなみにビスマルクは使用人に必要性を感じないため、家には少女とビスマルクしかいない。

つまりこれを置いた人物は必然的に限られてしまう。


「…嬉しいけど、これはちょっと」


――いや、かなり恥ずかしいかもしれない。


少女は赤面した。

彼女はかつてない程゛恥ずかしい゛と言う感情を知った。



その日の夜。
ビスマルク帰宅後。


「ねぇ、なんでわかったの?」

「お前の顔色が悪かったからな」

「それだけ?」

「…毎月、お前が風呂を先に入らない時期があれば誰でも気付くだろう」

「……」

「…何だ?」

「いや…ビスマルクがそもそも女の子の日と言う概念を知っているのが意外で」

「……」

「そう言えばビスマルク。一人でよくナプキン買えたね。色々種類があって大変だったでしょ?」

「……………………店員に聞いた」

「………男の子の日もあれば良かったのにね」

「!?」

「そうしたら私もビスマルクに何かしてあげられたのに…って!!ビスマルク大丈夫!?」

「ゴホッ…(飲んでいたコーヒーで噎せた胸を叩きながら)……頼むから少し黙っていてくれ…」



おわり。




08.9.15〜08.12.22くらい?