Health room where satan lives.





その場所の特徴その1。悪魔がいる。

その2。ベッドがある。

その3。本来は体調が悪くなったら行く場所。

さあ、何処でしょう、とその学園の生徒に問えば、ほとんどの生徒が十中八九その1の項目で場所を当てることが出来るだろう。

何故なら彼らの中では保健室と書いて「デビルキャッスル」と読むからだ。

デビルキャッスルに住んでいるのは、黒い悪魔・保健医赤屍蔵人。
そこでは毎日何百ものメスが磨かれ、女生徒がイケニエになっているらしい。

しかし時は21世紀、その悪魔を倒すべく一人の勇者が立ち上がろうとしていた…



Health room where satan lives



その名は工藤卑弥呼。貧乏人でありながら金持ち学校・スバル学園に在籍する彼女は保健委員である。

「…『不本意ながら』なのに…」

彼女はぶつくさ言いながらデビルキャッスルの扉の前に立った。
中から聞こえてくるのは、まだまだオコチャマな勇者には聞くに堪えない、甘〜い女性の声とベッドの軋む音。

うう、と一瞬躊躇いが出たが、勇者は扉を勢いよく開けた。

ドターン!
「キャアッ!」

慌てているのは女生徒一人。悪魔はいつもの胡散臭い笑顔全開で、

「今日も元気ですねぇ」

などと宣った。

「失礼しました!」

制服を整えた女生徒が去って行く。
卑弥呼はそっちには見向きもせず、ネクタイを締め直す赤屍を睨んだ。

「…先生」
「はい♪」

正直先生とか呼びたくないのだが、根が真面目な卑弥呼は「一応目上である」赤屍に敬語で話しかける。

「何故今日の委員会の会議に来なかったんですか?」
「彼女と過ごしていましたから。さっきは2ラウンドめに入るところだったのですが」

そこまで聞いてないから。
そう思いつつ卑弥呼はこの天然だかなんだかな保健医を睨みつける。

「おや?怖い顔をして。どうしたんですか?」
「生徒の前で不謹慎な行為はやめてください」
「卑弥呼さん、見ていたのですか?そういうスリリングなプレイもなかなか良「見てないっ!」

いきなりの変態発言に思わず近くにあったタオルを投げつけた。
ていうか学園は何故こんな保健医を雇ってるんだ?彼が誰かを治療してるところなんてあまり見ることがない。

「私は可愛い生徒たちの心を治療してあげてるんですよ」
よくもまぁヌケヌケと。自分のファンの女子だけしか治していないくせに。(というかケガをしてもまず保健室には来ない生徒が多い)

「どうです?卑弥呼さんも」

何が「どうです?」だ。何をする気だ何を。

「遠慮します」

当然の反応を返して卑弥呼は赤屍から距離を取ろうとした。

「そう遠慮なさらず」

…取ろうとしたのに気が付けば、天井を見上げていた。

「な…」
「今日はバイトを休みましょうね?頑張るのは悪くないですが、睡眠不足は健康に悪いですから。最近は勉強にも影響が出ているようですし」

う、と卑弥呼は表情を変えた。図星。
今は18時から22時までは時給の安いコンビニでバイト、その後深夜まで営業しているレンタルビデオショップでバイトをしている。勤務時間は23時から明朝3時。時給はなんと1000円。
その分睡眠時間は削られ、最近は時々授業中うとうとしてしまうようになってしまった。

なんで知ってるんだ、と思いつつ、しかしバイトがあるので卑弥呼は起き上がろうとする。
だが赤屍はそれを笑顔で制し、彼女に毛布を掛けてやる。

「ベッドをフランス製のものに変えてみました。ふわふわで気持ちいいでしょう?」
「…気持ちいい、けど」
「バイト先には私が連絡しておきます。こう見えて顔が広いんですよ」

言いながら赤屍はメスを磨き始めた。

脅す気だ。彼女が寝なかったら彼女もその銀色の餌食となるだろう。

「おやすみなさい、卑弥呼さん」
「…おやすみ。」

大人しく卑弥呼は目を閉じた。
カーテンが閉まる音がして少し薄暗くなったのが分かった。

ガラ、と赤屍が部屋から出て行く音が聞こえた。

今なら逃げられるけど、と少し迷った卑弥呼だったがゆっくりと体を起こし、ベッドを降りようとする。

だが、ふと鼻をくすぐる香りに気が付いて、動きを止めた。

ラベンダー。安眠の効果もあるアロマ。

(…変なとこだけ気がきくんだから)

そこがいいのよ〜、とはクラスの赤屍ファンの一人の言葉である。

(迷惑なだけよ!)

たとえどんなに保健医として最低でも、そんな優しさを見せられたら、嫌いになんてなれない。なんて単純な人間なんだ、私は。

「もう!」

八当たり気味に枕に頭を勢いよくつっこみ、卑弥呼はまた目を閉じた。

ラベンダーの香りが鼻をくすぐる。

(…いい香り…)

自分では平気だと思っていても、体が休息を求めていたようだ。

いつの間にか彼女は、ふわふわのベッドに完全に体を預けていた。





勇者は悪魔城の扉の前に立っていた。
名前は美堂蛮。かなり不本意ながら保健委員である。

彼がそこに来た理由はただ一つ。1時間ほど前にここに入っていったクラスのもう一人の保健委員を迎えに来たのだ。
扉の向こうからは何も聞こえない。最悪な事態にはなっていないようだ。

「…失礼します」

一応形式ばって扉を開けた。

誰もいない、いや誰かがベッドに寝ているだけで、この部屋の主はいない。

ベッドに誰が寝ているかはカーテンが閉まっているから分からない。嫌な予感。
彼は、そろそろと、カーテンの中を覗いた。

嫌な予感が当たった。
彼が迎えに来た少女が、ぐっすりと寝ている。

「…あのクソ医者ぁ!」

非常に間違った想像を訂正してくれる人物はおらず、彼は勘違いしたままどこに行ったか分からないラスボスに戦いを挑みに走った。

感動的なエンディングを彼が迎えられるかは定かではない。



fin









■     □    ■

なんと「Do more harm than good」 カルカ様から頂いてしまいました!!

あわわわ!!すごいあわわしてます。大好きなんです!!大ファンなんです

保健医!!!
もうこの単語が出てきただけで、携帯持ってローリングしてたんです!!
真剣に動悸がとまらくて何度困ったことか・・・!!
最高に萌えます!エロ保健医vV
そして今回。エロいながらがらも、ちゃんと卑弥呼を特別扱いしてます!!
はわ〜。ステキvv

カルカ様、ありがとうございましたー!!


06.10.10