魔女と死神のくる年。その1





 年が明けた最初の朝。
 
 鳴き声が聞こえ、扉を開けたら見覚えある犬がいた。
 
 知的な眼差しの犬は、口に手紙をくわえ愛らしげに、首をかしげていた。



 手紙は――


 優秀なる運び屋さんへ
 

 明けましておめでとう!

 屈指の運び屋たるレディポイズンに、この可愛くて賢く、主人に忠実に仕えるこの犬を、今日中に音羽マドカ宅に‘運ぶ‘ことを依頼する。
 
 尚、仕事には貴方のミステリアスデンジャラスの素敵な彼と同行すること!

                               依頼人 盲目の天才バイオリニスト
                                     ある喫茶店の元気ハツラツ看板娘‘s



 2人の運び屋は音羽邸に向かっている。
 
 卑弥呼の腕にはある有能、聡明な盲導犬が、赤屍の腕には元天才犬が居る。
 
 どうやら卑弥呼の家の前にモーツアルトが居たように、赤屍の家の前には、手紙をくわえたラッキーがしっぽを振って待っていたらしい。

「まったく元旦から仕事とはねぇ。しかも依頼人は、あの天然純粋培養娘達。何を企んでいるのかしらね?」

「面白い仕事ならば何の問題もないのですが。吉よりも蛇が、蛇よりも血が飛び散るような・・・」

「無理。絶っっ対無理。蛇や血なんか出るわけないでしょ。あの子達からでるのは花かミルクが関の山じゃないの」

「クス。そのとおり。あまり期待は出来ないでしょうね・・・」
 
 そう言いながら死神は機嫌が良さそうだ。

 撫でながら犬に微笑みながら向け視線は、優しげともいえる。

――もしかしてこいつ犬が好きなのかしら。こんな仕事を受けるのも意外だったし。

「卑弥呼さん。確か、お隣の国では犬料理があるんでしたよねv」

「あんた新年そうそう、それーーーー!?」




 音羽邸に到着すると、依頼人達が待ってましたとばかりに出迎えた。

「あー卑弥呼さん。赤屍さん待ってましたよー!ラッキーお勤めご苦労!!」

「ワン!」
 
 卑弥呼は依頼の品を腕から下ろした。

「はい。じゃ仕事は完了ね」

 マドカは、ニッコリと微笑んだ。

「ええ。では早速依頼料をお支払いいたします」

 その言葉と同時にバタンッと大勢のメイドが扉を開けて登場し、瞬く間に卑弥呼の周りを包囲する。

「えっ?えっ・・・?」

「赤屍さんはこっちですよー!」

 卑弥呼が戸惑っている間に、赤屍は夏実&レナコンビにどこかに連れていかれる。

「ちょ、ちょっと何を・・・!」

 という声は無視され、卑弥呼の服はあれよあれよという間に剥かれていった。



 そして。

 数刻後に鏡の前にたった卑弥呼が纏っていたのは、深い紫に大きな金糸の牡丹が咲いた華やかな振袖。

 卑弥呼は予期しない事態に少し呆然としながら、着慣れない衣装を纏っている自分に見入る。

「夏実さんとレナさんと一緒に選んだんです。気に入っていただけると嬉しいんですけど。――ああ、こういうときにお似合いですねと言えないのが本当に残念!卑弥呼さんは美人さんだと聞いているので、とっても綺麗だと思うのに」

「マドカさん、どうしてこんなことを・・・」

 してくれるの?

 尋ねると、マドカは穏やかな笑顔で答えた。

「貴方に憧れているから」

「えっ?どういう・・・」

「あっ、彼の準備も出来たようですね。」

 赤屍が深緑の着物に黒の羽織の姿で、夏実とレナに連れられて現れた。

 不覚にも卑弥呼は、赤屍の和服姿に動揺する。マドカは卑弥呼の動揺を知ってか知らずか、クスリと笑い「では、楽しんでいらしてね卑弥呼さん」と運び屋カップルを見送ったのだった。



 運び屋2人の後に、夏見とレナを見送るとビーストマスターがすっと、物陰から現れた。

「憧れている?あのレディポイズンに?」

 マドカは士度の突然の登場に、驚いた様子も無く答える。

「ええ。卑弥呼さんはとっても格好良いです!裏の仕事はとても大変なお仕事。女性では不利なことも多いでしょう?それにも関わら卑弥呼さんは裏社会で名をはせて活躍している。彼女は自分の力で好きな人と同じ世界で生きています。私は彼女がとても羨ましいし、憧れています。だから私は彼女達を精一杯応援したいんです」 




「・・・どうして、こんな事をしてくれたのかしら?」

「さて、夏実さんとレナさんは、これはラブラブ バックアッパーズの初任務なのです!ミッション名は初詣でイチャイチャ☆、とおっしゃっていましたが。」

 赤屍が懐手をしながら、のほほんと答える。卑弥呼は額を押さえる。

 わからないわ。まったくあの子達の考えることはわからない…。

 卑弥呼と赤屍は神社に向かっている。

 この格好ではデパート、ショッピングなどいっても浮くだけ。よって夏実達、依頼人の思惑通り、定番中の定番初詣コースになったのである。

 しかし。

「わぁ見て見て〜」

「お似合いねーv」

 どうにも、着物姿の男女というのは目立つ。確に女性の振袖はたまに見掛けるが、男性の着物姿とういうのは滅多に見掛けない。その上赤屍は和服が映える顔立ちらしく、余計目立ってしまう

しかも

「仲の良いご夫婦ね〜」

「私も結婚したらあんな風に…」

「・・・!・・・!!」

 着物のせいか先ほどから、ちらほらとカップルを通り越して夫婦に間違えられる。頂けない。全然頂けない!!

――あたしいくつだと思ってるのよ!!こんな男とバージンロード!?そこまで堕ちてないわよ!!


 内心、割れんばかりに叫んでいる卑弥呼をよそに、赤屍はまったく他人を気にする様子はない。機嫌よさげに歩きながら、あるものを見つける。

「おや、あれは餅搗きですかね?」





「あけましておめでとうございますv」

「おめでとうございます…」

「あぁ、おめでとう………」

 しばし沈黙が落ちた。

 家の扉を開けたまま仕方なしに馬車が「で、それは?」と訪ねる。

 ニッコリと運び屋界の魔人は答えた。

「おすそわけですvv」

 持っているものを差し出す。

「これは…」

「お餅です。きな粉餅、あべかわ餅、磯辺餅、うんだ餅、からみ餅、あんころ餅、このお餅全部私が搗いたんですよvv」

 最後の言葉で、カッと目を見開き、すぐに卑弥呼に哀れみの目線を馬車はおくった。その視線に最上級の同情を感じる
 
 …あぁ自分は今、とんでもなく酷い顔に違いない。
 
 そう思いながら先ほどの出来事を思い出す。
 
 町内会の餅搗き大会の人々の輪に、つかつかと歩み寄った赤屍は「私も手伝ってよろしいですか?」と申し出た。
 
 足腰の弱い町内会のご老人達は大喜び。「なんて心優しい若者だろうと」目頭を熱くしながら、赤屍を歓迎した。


 またもや予期しない事態に動転しながら、卑弥呼は赤屍を止めようとしたが、「私に考えがあるんです」と赤屍の言葉に制止は封じられた。

 したがって卑弥呼はDrジャッカルの餅つきなどという、世にもおぞましいものを見させられた。

 餅つきを終えた赤屍はほくほく顔で「やっぱり頂けましたv」と両手にたくさんの餅を持って戻ってきた。

 その餅の量から初詣を断念し、家も近くだからと馬車に新年の挨拶も兼ねて、お裾分けに来たしだいである。
 
 思い出すだけで、町内会のご老人とは違う理由で目頭が熱くなってくる。

 この間のTDLも色々あったけど、今回も・・・!!

 馬車が複雑な顔で、礼を述べながら餅を受取る。

 すると家の中から。

 「あなたー、お客様なの?」
 
 ――えっ?
 
 「外でお相手するなんて失礼よ、上がって頂いて…」

 ――ええっ!?




 馬車の家にお邪魔して数刻。餅も片付けたことだし、今度こそ赤屍と卑弥呼は神社に向かっている。

「知らなかったわ。馬車さんに奥さんがいたなんて…」

 とびきり美人というわけでは無いが、すごく上品な女性だった。

「内縁の妻、というやつですね。籍は入れてないそうですから」

「お子さんは?」

「いらっしゃいません。奥方はとても欲しがられているらしいのですが」

 そうなんだ…。長年同業者として、交流があったが、知らなかった事実だ。確に馬車はハンドルを持たなければ、極めてマトモで無害な常識人だ。奥方がいてもなんら不思議はない。

 微妙に気になるのは、どういう経緯で赤屍がその事を知ったかだが…。馬車とそういう会話もするのだろうか。

「!」

 つらつら考えていると、つまずいて転びそうになった。慣れていない草履で歩きにくい。

 あぁやっぱりこんな、いかにも女の子らしい格好は似合わない。ぴらぴらと風になびく鮮やかな長い袖をみながら思う。これでは馬子に衣装にもならない。猫に小判、豚に真珠。いやそこまでさけずむのは卑屈か…

「!!」

 再び、つまずく。

 今度は勢いが良い。上体が崩れる。こらえようにも、慣れない振袖で動きが制限がされている。

――転ぶ…!

 ぱしっと腕をつかまれて地面と衝突を免れる。

「大丈夫ですか?」

「…アリガト」

 ――…自分、情けないかも。
 
 恥じらって良いやら、ヘコんで良いやらでうつ向く。

 赤屍は卑弥呼の腕を離す。とすぐに卑弥呼の手を握る。

 「…えっ、何?」

 「繋いでいきましょう。見ていて危なっかしいので」

 「…恥ずかしいわ」

 「怪我をするよりマシでしょう?それに着物が汚れたらもったない。お似合いなのだから」

 「……」

 でた。ナチュラルキラー発言。

 ――どうして妙な所でこの男はこう・・・。。

 「あぁ『というのは手を繋ぐため口実です』と言った方が、気が利いているんですかね?」

 「なにクサいこと言ってるのよ。鳥肌たつわよ」

――もしかして遊び慣れてる??

「神社が見えて来ましたね。さて願かけは何にしましょうか」

「あんたの場合は、考えても考えなくても一緒でしょうが」

 どうせこの男の願いなんて、敵、殺、食、の単語が使われるに決まっている。
 
「クス。では卑弥呼さんはお決まりなので?」

「…そうねぇ」

 赤屍をちらりと見る。

 いつもは手袋ごしの掌も、今は直に触れている。その意外な暖かさ。

――今年も。まぁこいつと一緒に

 居れればいいんじゃないかしら、とか。

 卑弥呼はクスリと、悪戯っぽく笑う。

「…教えてあげなーい」

「おやおや意地悪ですね」

「誰が意地悪よ、誰が」

 運び屋最強カップルは、仲良く並んで神社の階段を上がっていった。



End  

















なんだろうこの大人しさは・・・(謎

ツッコミ点。
一、着物ネタあんま活かせてないじゃん(技量不足)

二、マスタービースト。あんたどんだけ家で地位低いんですか?by物陰

三、赤屍さんの家のセキュリテイって、そんなやわなの?
(奴は絶対高級マンションじゃないのか)

ええまぁ、奴はいつでも敵さんカモーン、家に蠅が飛び込んでくるのをうっとり待ち構えているので
わざとセキュリテキイ弱くしてるでよろしく(無理やり)


連載になっちゃって、リアルタイムで読まれて方。ホントすいません(土下座)