自分はいつからこんなに綺麗にドアを閉める女になったのだろう?

荒くれ者の裏社会の男達にも「男勝り」と言われていた自分。
昔は乱暴に音をたててドアを閉めていたはずだ。
けれど今、ドアは音を立てずに静かに閉まった。

――あぁそうか。

振り向いてベッドの上に目を細めて座る男を見る。

この男のせいだ。

仕事になれば悪魔のように残酷。獣よりも野蛮で好戦的。
その男の普段の仕草は丁寧で、信じられない程紳士的だ。
例えば食事する時の手つきだとか、ティーカップをかき回す仕草だとか、女性に席を譲る立ち振る舞いだとか、赤屍の些細な仕草はすごく綺麗だ。様になっている。
多分自分はその美しさに目を惹かれ、気がついたら心までも惹かれていたのだ。
触れたいなと言うほのかな欲望は、あっさりと叶えられた。
獣のような嗅覚の鋭敏さで、赤屍は近づいてきたのだ。

近づけば手のひらに口づけられる。
どうしたのかとその深い闇色の瞳に問われたが、卑弥呼は何でもないと首を振った。
手を引かれて赤屍の腕の中に収まれば、その首筋に口づけられた。


服を脱がしていく赤屍を手伝うように身を反らす。
赤屍を好きだと思った時からずっと卑弥呼は彼に歩み寄っている。


――何故私はこんなにあんたを好きになってしまったのだろう。


卑弥呼は目を閉じて、体温の低い赤屍の背に手を伸ばす。

日に日に私は貴方に支配されて、私の中で私の尊厳だとかプライドだとかが、根こそぎ崩れてしまっていくようだ。
私という存在が薄くなり消えていっていく。

それが怖い。怖くて溜まらないのに、もう離れられない。

自分を、深く、すべて根こそぎ奪われる。

限りなくあなたに近づいて同化する。




それは、息も忘れるような恍惚。



end                


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