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GB*夜卑
気だるげに肘をつく和窓一つとっても格式高く、
すべてが品良く調和している風鳥院本家の屋敷。
白い障子と、同じく白い面。
色素の薄い髪と瞳が月明りに寵愛されて、発光するように薄く輝く。
夜半は月を見上げている。
虚偽の空は夜の闇。
浮かぶ月は満月で、その輪郭はけぶるようにぼやけている。
眺めながらふと先程、すぐ上の姉に言われた言葉を思い出す。
「ねぇ夜半。第一の鍵はどうするの?」
雑誌をめくりながら、あっけらかんと言い放つ。
「ブードゥ・キングとかいって信用できないしー。ってかあいつ、あたちら利用する気満々だしー。あっ、この洋服買おう〜v…早く手を切った方が良いと思うのだ!舞矢ちゃんは!」
冷ややかに舞矢を見ていた夜半が、フッと微かに笑った。
――第一の鍵か。
「あれは僕に似ている」
否、僕の、僕達の運命に。
光と闇。憎しみを愛情。正と悪。
同じ血が流れた真逆の分身を持つ。
自ら動いて、コンタクトを取った少女は「光」の方。
あの気高い存在と同じ。
優しく正しい、闇に愛する者を奪われるばかりの哀れな被害者。
自分の言葉一つ一つに翻弄される彼女はまったくもって可愛らしかった。
その彼女が、近づいてくる。
夜半の口が、はっきりと弧を描く。
近づいてくる、近づいてくる、誰よりも早く。
自分に。自分という「虚無」に。
今、この瞬間も影に侵されている彼女。
愛情が憎悪に侵食されていく光景。
出来るなら今すぐにでも駆けて行って、ずっとその光景を眺めていたい。
己の分身の次に執着しているのは、仮初の兄妹を差し置いて彼女なのかもしれかった。
だが。
「まだ早い」
あの巨大な力を持つブードゥーキングを倒すには準備をしなければならない。
敵対勢力もまだ残っている。
手を切るのは敵対勢力が潰しあって消えた後だと。そう舞矢には説明した。
夜半は愛おしげに、淡い月の外周をなぞる。
まるで二つの月を重ねて、ダブってしまったような曖昧さ。
「そう、まだ早い。だがそう遠くない日、
それもやらなければならないだろう。見たいものがある。」
光と闇が統合する瞬間。
そして彼女が、その呪われた宿命通り最も愛おしい人間を手にかけた瞬間を。
見なければならない。
ふいに夜半の視線は月から離れ、虚空に彷徨った。
その横顔はいつもと変わらず冷徹で、温度が感じれらない。
しかしぽつりと最後に漏らした声は小さく、どこか揺れいていた。
最愛の者を手にかけた、その後。
「…………………あの少女はどうするのだろうな」
じっ、と部屋を灯していた蝋燭の火が消えた。
『侵月』
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