ギンの様子は、まるでふて腐れた子供のようで、乱菊はおかしくてたまらなかった。

「…計算違いや」
「あんたの計算なんて糞食らえよ」

ギンの胸には、灰猫が刺さっている。ここまでは思惑通り。
しかし灰猫と同時発動させ、乱菊の体からすれすれに軌道をズラした筈の神槍が、彼女の胸に埋まってしまった。
自分の体から外れようとした刃先を、乱菊は自ら掌で捕まえて、その胸に埋め込んだのだ。

ギンにとっては、二つとない手痛い予想外。

「馬鹿やなぁ。乱菊」
「あんたのが馬鹿じゃないの。馬鹿馬鹿大馬鹿」

ギンの胸から溢れる血が、灰猫の刀身を伝って乱菊の方へ零れてくる。
同じように、乱菊の血液は神槍を伝ってギンの方へ。


あぁ。どうせなら自分の胸に開いた穴が、相手の血で埋まれば良いのに。

そう、二人は思う。


ギンが乱菊の髪に手を伸ばそうとする。


それが合図だった。


一歩、踏み出す足は同時。
胸に食い込む刃を、さらに深く抱き込んで

2人の距離は縮まる。

乱菊が、ギンの腕の中に収まり
ギンが乱菊の腕に収まる。



あぁ、やっと……



「捕まえた」


『Happiness』