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BLEACH*京七
早朝。
八番隊副官はいつも誰よりも早く入舎する。
隊舎の庭に咲く花に水をやるためだ。
そんな事私達がやります。慌てる部下を
「すべては隊長を止められない私の責任だから」と止めたのは七緒だ。
八番隊の庭は隊舎と思えない壮観さだ。
なるほど流石は風流人で名を流す隊長の隊舎と、事情を知らぬ他隊の者は感心するが、実情は異なる。
すでに通算四桁まで届こうかという、仕事放棄の逃亡回数。
青筋を立ててメガネを上げる七緒に、素早く京楽は花を渡す。
「見て見て〜♪綺麗でだろう?」
確かに花は綺麗だが、根っこがある。それに土だらけだ。
「何処から引っこ抜いてきたんですか!!」
最初は怒鳴っていた七緒だが、
もう最近では口を開くより先に、上司にシャベルを突き出すことにしている。
近頃では京楽も最初から鉢入りを買ってくるという事を学習したりして、
八番隊は目出度く豪華絢爛な庭を持つに至った。
隊長が自分へ持ってきた花。
たとえ自分の機嫌を宥めるための小道具とわかっていても、やはり嬉しかった。
他の隊長に庭の世話をさせるのを断ったのは、
責任感ではなくただの我侭だというのは十ニ分わかっている。
ふと、七緒は水をやっていた手を止めた。
つい昨日まで、元気に咲いていた花が枯れている。
「水をあげ過ぎたかしら…」
青い花弁が美しい花で、気に入っていたのだが、
どうやら逆効果だったらしい。
変色してカラカラに乾いた花弁に触れる。
そういえば昔、母も似たような事をしてしまった事があった。
薄藍にキリっと入った黄が綺麗な鳥で、事の外母は可愛がっていた。
暇があれば話しかけ、褒めちぎり、いそいそをエサを与えていた。
母は気さくで優しい善人だったが、限度というのが良くわかっていない人だった。
母の寵愛を浴びるように与えられた鳥は、
一ヶ月という魂尺界では一瞬のような短い時間の中で死んでしまった。
原因は誰もがすぐに悟った。母が餌を与えすぎたのだと。
母と自分は自分似ている。
それは昏い直感だった。
花が水をあげ過ぎれれば枯れるように。
鳥も餌を与えすぎれば死んでしまう。
枯らしたかった訳ではない
殺したった訳ではない。
愛情を注ぎすぎて壊れてしまった。
「おはよう。七緒ちゃん」
今日は遅刻でないようだ。
廊下に京楽が寝癖もそのままに、
洗顔もしたかどうか怪しいだらけきった顔で立っていた。
…いつもの、
いつも通りの上司からは
昨夜の事など微塵も感じられない。
あなたは。
言葉が喉に刺さってつまる。
過ぎた情は暴力で、求めすぎる感情は凶器だ。
――私のそれに。あなたはいつまで耐えてくれるんですか?
喉に刺さった言葉を胸に下げ、そっと蓋をする。
「おはようございます。京楽隊長」
常と同じ微笑を浮かべながら、七緒は枯れた花を自分の影に隠した。
『存在の不安』
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