::愛の形は十人十色::





 卑弥呼は信じられなかった。

 その扉の中の風景はあまりにもあまりにも奇想天外。

 ばくばく。大きく心音を響かせながら、とりあえず扉を閉める。





――「この部屋だけは絶対に見ないでくださいね」

――「?」

―― 「いいですか?絶対に、ですよ」


 初めて赤屍の家に上がった時に、念を押すように言われた言葉。

 不審に思いながらも、プライバシーを侵害する気も、赤屍が見るなというものを見ようとする無意味かつ有害な度胸を持たなかった卑弥呼は今の今までこの扉の向こうの景色を知らなかった。


 じっとりと汗ばむ掌で、もう一度扉を開ける。


 そこには


 ふさふさと抱き締めたくなるような毛皮。首を飾る藍色のリボン。見つめている何かを語りかけてきそうな愛らしいつぶらな黒い瞳。良い具合に色があせて味が出て値段も張りそうな代物から、カラフルキューティなベアまで。無数のテティなベアがぴらぴらと風で靡くピンクのカーテンを背景に存在していた。


バタンッ!!

 蝶つがいなど軽くふっ飛ばす勢いで扉を閉める。


 幻覚…!?

 汗をだらだらかきながら、どすどすと足早にリビングに向かう。

 「ああ、卑弥呼さん。今廊下の方でもの凄い音が…おや、お帰りで?」

 「…急用!!」

 至急赤屍蔵人の人格像を再構築!それと今後の対策…!!

 拳をぎゅううとして決意する卑弥呼に、「わかりました。ではこちらをどうぞ。」と赤屍はマフラーを渡して帰したのだった。






 帰り道。

 卑弥呼は考えている。

―そういえばあいつの携帯のストラップも…

―いつだったか風邪の時も変な肉を

―そういえばかなり昔。銀次が変なことを言っていたような


『凄かったんだよー。赤屍さん、担いできた熊を、慣れてるみたいに捌いて、焼いて。』


 …好きな熊を、

 捌いて

 焼いて??

 はぁっ!と卑弥呼はその行動にぴったりな言葉を見つける。


 …カニバリズム。



 赤屍蔵人とカニバリズム。似合っている。それはもう怖いくらい。そのマッドラブな愛の形はDrジャッカルに合ってる。

 ということは。

 もしかして、もしかしなくてもそんな男と仮にも付き合っている自分の身は。

 かなり危ない…?

 卑弥呼は想像する。赤屍自分の死体を愛おしげに見た後(それだけでもある意味ぞっとするが)その死体を捌いて焼いて、ばりばりと自分を頭から食べていく赤屍の顔は愉悦に満ちている…。


 怖い。真面目に怖すぎる。

 ブンブンとその想像を振り払うように激しく首を振る。
 
―あれは幻覚。絶対幻覚。疲れてたから疲れてたから疲れてたから!そのせい絶対に!!

―大体最強最悪の殺人鬼がティディベアコレクター!?そんなの許されない!この国には殺人鬼は殺人鬼らしくっていう法律があるってぇの(そんなの無いってぇの)

―だから違うわよね。邪馬人…!

 客観的にみれば、心の中で叫ぶそれはほぼ自己暗示。最後のソレは神頼みならぬ天国にいる兄貴頼み。

 絶対に絶対に!病的一歩手前くらいに繰り返しながら顔をマフラーに埋める。

 すると、ふと、マフラーに何かが刺繍しているのが見えた。

 「?」

 首を傾げながら、広げてみると。



……クマの刺繍があった。



「……」



 やっぱ好きか。

 自分が刺繍をするほど。

 そんなに好きなわけ…?



 ぐすん。

 鼻をすすりばがら、がっくりと肩を落とす卑弥呼はほぼ涙目であった。

End


           














ウチには高校の時から「アカバネv」という名のテディベアが在住しております。
最近はオプションの「箪笥の上のほこり」がつきまくりで祐樹から飛び蹴り必至です。
本当はタイトル「赤屍蔵人の秘密の部屋」にしょうかと思ったのは嘘のようで本当な話(頭大丈夫ですか)

マジでネタが最近クマクマで自分で食傷。
こういう意味でも本編進めようと思う今日このごろ。